蒸気配管の伸縮量の計算方法
蒸気配管で伸縮量の計算が必要な理由
蒸気配管は運転時に高温(120〜180℃程度)になるため、配管が大きく熱膨張します。この膨張を適切に吸収しないと、配管の破損・継手のリーク・支持金物の破壊などの重大トラブルにつながります。
① 配管材質の選定:往き管と還り管
| 区分 | 推奨材質 | 理由 | 水分量 |
|---|---|---|---|
| 蒸気往き管 | SGP(黒ガス管) | 蒸気は水分が少なく腐食しにくい | 少ない |
| 蒸気還り管 | ステンレス鋼管(SUS304等) | 凝縮水(ドレン)が多く黒ガスでは腐食が進む | 多い |
② 材質別の伸縮量(1mあたり)
SGPとステンレス管では熱膨張係数が異なるため、同じ温度差でも伸縮量が違います。ステンレスの方が約34%伸縮量が大きい点に注意が必要です。
| 温度差(℃) | SGP(黒ガス管)mm/m | ステンレス管 mm/m | 差(SUS−SGP) |
|---|---|---|---|
| 10℃ | 0.127 | 0.170 | +0.043 |
| 20℃ | 0.254 | 0.340 | +0.086 |
| 30℃ | 0.381 | 0.510 | +0.129 |
| 50℃ | 0.635 | 0.850 | +0.215 |
| 80℃ | 1.016 | 1.360 | +0.344 |
| 100℃ | 1.270 | 1.700 | +0.430 |
| 120℃ | 1.524 | 2.040 | +0.516 |
| 150℃ | 1.905 | 2.550 | +0.645 |
③ 計算式と手順
伸び側の温度差を求める
△t1 = 蒸気最高使用温度(t1) − 取付時気温(t3)
縮み側の温度差を求める
△t2 = 取付時気温(t3) − 最低気温(t2)
伸び量・縮み量を計算する
伸び量 = 配管長さ(m) × 伸縮係数(mm/m) × △t1 ÷ 100
縮み量 = 配管長さ(m) × 伸縮係数(mm/m) × △t2 ÷ 100
必要継手本数を求める(切り上げ)
伸び側本数 = 伸び量 ÷ 継手の伸び側吸収量
縮み側本数 = 縮み量 ÷ 継手の縮み側吸収量
→ 大きい方を切り上げて採用
④ 計算例(SGP 30m・蒸気120℃)
📐 設計条件と計算過程
| 配管材質 | SGP(黒ガス管) | 配管長さ | 30 m |
| t1:蒸気最高使用温度 | 120 ℃ | t2:最低気温 | −10 ℃ |
| t3:取付時気温 | 20 ℃ | 継手 伸び吸収量 | 50 mm |
| 継手 縮み吸収量 | 20 mm |
① 伸び側温度差:△t1 = 120 − 20 = 100℃
② 縮み側温度差:△t2 = 20 − (−10) = 30℃
③ 伸び量:30 × 1.27 × 100÷100 = 38.1 mm
④ 縮み量:30 × 1.27 × 30÷100 = 11.43 mm
⑤ 伸び側本数:38.1 ÷ 50 = 0.762 → 切り上げ 1本
⑥ 縮み側本数:11.43 ÷ 20 = 0.572 → 切り上げ 1本
インタラクティブ計算ツール
配管長さ・温度・継手性能を入力するだけで、必要な伸縮継手本数を自動計算します。現場での素早い確認にご活用ください。
蒸気配管 伸縮継手 計算ツール
配管長さ・温度・継手性能を入力して必要本数を算出
📊 計算結果
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 往き管材質 | SGP(黒ガス管)で可 |
| 還り管材質 | ステンレス鋼管推奨(ドレン腐食対策) |
| 伸縮係数(100℃時) | SGP:1.27 mm/m SUS:1.70 mm/m |
| 温度条件の標準値 | t2(最低気温)= −10℃、t3(取付時気温)= 20℃ |
| t1(最高使用温度) | 必ずボイラー業者に確認(通常120〜180℃) |
| 必要本数の決定 | 伸び側・縮み側の大きい方を切り上げ採用 |
現場でよくある失敗3選
❌ 失敗① 伸縮継手の設置間隔が長すぎる
蒸気配管は温度変化が大きく、伸縮量を超えた場合に配管が曲がったり支持金物が破損します。設置間隔を計算せず「勘」で決めるのは危険です。
対策:線膨張係数×温度差×管長で伸縮量を算出し、伸縮継手の許容量以下になるよう間隔を設定する。
❌ 失敗② 固定点(アンカー)と自由端の設計を省略する
伸縮継手はアンカーと自由端の組み合わせで機能します。アンカーを設けないと配管全体が動き、継手が正常に機能しません。
対策:伸縮継手を設置する際は必ず両端のアンカー位置を図面で確定してから施工する。
❌ 失敗③ 材料の線膨張係数を鋼管で統一する
ステンレス管と炭素鋼管では線膨張係数が異なります。異種材料を組み合わせた系統で同一係数を使うと計算値がずれます。
対策:配管材料ごとの線膨張係数(鋼管:12×10⁻⁶、SUS:17×10⁻⁶)を使い分ける。
📄 この記事で紹介した計算をそのまま使えるExcelテンプレートをnoteで販売中です
【設備設計】配管摩擦損失計算書 Excel|Hazen-Williams式・8区間対応
👉 noteで購入する(¥1,480)
🎁 設備設計Excelテンプレート 9点セットもnoteで販売中(単品合計¥9,840 → セット¥3,980・約60%OFF)
【設備設計】現場で使えるExcel計算書テンプレート 9点セット
👉 noteでセット購入する(¥3,980)