建築排煙設備と消防排煙設備の違いを解説します

排煙設備とは、火災が発生した際に煙を建屋外部に排出するための設備です
火災発生時の死亡原因で最も多いのは火傷、次いで一酸化炭素中毒と窒息になります
排煙設備は火災発生時における死亡原因の2位一酸化炭素中毒、3位の窒息を防ぐために設けられる重要な設備です。
排煙設備には消防排煙(消防法に基づく)と建築排煙(建築基準法に基づく)の2種類があります。
今回両者の違いについて解説していきます
建築基準法上の排煙設備の設置基準
建築基準法上排煙設備の設置義務がある建物を記載します
①不特定多数が出入りする劇場、病院、学校、百貨店の特殊建築物で延べ面積が500㎡以上
②階数が3階以上で延べ面積が500㎡以上の建築物
③排煙上の無窓の居室(天井又は天井から下方80cm以内に居室の床面積の1/50以上の開口部がないもの)
④延べ面積が1000㎡を越える建築物の居室で、その床面積が200㎡を越えるもの
消防法上の消防排煙の設置基準
令別表第一項目 防火対象物 | 下記条件の場合設置 |
⑴ イ 劇場等 ⑴ ロ 集会場等 | 舞台部床面積≧500㎡ |
⑵ イ キャバレー ⑵ ロ 遊技場等 ⑵ ハ 性風俗関連特殊営業店舗 ⑵ 二 カラオケボックス等 | 地階又は無窓階床面積≧1000㎡ |
⑷ 百貨店 | 地階又は無窓階床面積≧1000㎡ |
⑽ 車両停止場 | 地階又は無窓階床面積≧1000㎡ |
⒀ イ 車庫等 ⒀ ロ 特殊格納庫 | 地階又は無窓階床面積≧1000㎡ |
⒃ イ 特殊用途の存する複合 ⒃ ロ 16項イ以外の複合用用途 | 各用途の設置基準に従って設置する |
⒃の2 地下街 | 延べ面積≧1000㎡ |
上記防火対象物が該当しますが設置免除に該当するケースがあります
①消火活動上支障がない部分
・直接外気に開放されている部分
・固定式の特殊消火設備が設置されている部分
・消火活動上支障を生ずる恐れがないものとして消防庁長官が定める部分
②既存の防火対象物
これらの基準に当てはまるものは消防法上、排煙設備の設置を免除されます
建築排煙と消防排煙の設置基準の違い
消防法に規定する排煙設備の設置基準は、建築基準法との整合性が図られるようになっております。
しかし排煙設備の設置の目的が両者によって異なります
①排煙設備の設置目的
建築基準法・・在館者の安全と円滑な避難が目的(利用者が避難しやすいように設けられる設備)
消防法・・消防隊の安全と円滑な消火活動の確保(消防隊が消火活動をしやすいように設けられる設備)
②排煙設備の設置が必要な建築物についての違い
建築物の種類 | 建築基準法 | 消防法 |
劇場 | 延べ面積≧500㎡の場合 | 舞台床面積≧500㎡の場合 |
キャバレー・遊技場・百貨店 | 延べ面積≧500㎡の場合 | 地階又は 無窓階床面積≧1000㎡の場合 |
病院・旅館・共同住宅・福祉施設 料理店等 | 延べ面積≧500㎡の場合 | 規定なし |
地下街 | 排煙無窓の居室に 該当しすべて必要 | 延べ面積1000㎡の場合 |
③排煙設備の必要な場合と不要な部分についての違い
建築基準法 | 消防法 | |
排煙設備の必要な場合 | 階数≧3で延面積>500㎡の建築物 又は 延面積>1000㎡の建築物で居室床面積>200㎡ | 令28-1に規定する建築物 (消防排煙設置基準に記された建物) |
排煙設備の不要な部分 | 高さ31m以下の部分にある居室で、床面積100㎡以内ごとに防煙区画された部分 | 直接外気に開放されている部分で一定の条件を満足する場合 |