揚水ポンプの選定方法|流量・全揚程の計算式と選定手順をわかりやすく解説
揚水ポンプの選定では「揚程(全揚程)」と「流量」の2つを正しく計算することが重要です。この記事では、揚水ポンプの選定方法を計算式・選定手順・注意点とともにわかりやすく解説します。
揚水ポンプとは
揚水ポンプとは、受水槽に貯めた水を高置水槽や各フロアへ送り上げるためのポンプです。給水方式が「受水槽+揚水ポンプ方式」の場合、ポンプの選定が建物全体の給水能力を決定します。
揚水ポンプの選定手順
ポンプ選定は以下の手順で行います。
- 必要流量(揚水量)を算出する
- 全揚程を計算する
- ポンプ型式・台数を選定する
① 必要流量(揚水量)の算出
揚水ポンプの必要流量は、受水槽の容量を補給時間(一般的に8〜12時間)で割ることで求めます。
Q(m³/h)= V(m³)÷ T(h)
Q:揚水流量(m³/h)
V:受水槽容量(m³)
T:補給時間(h)※一般的に8〜12時間
例:受水槽容量が20 m³で補給時間を10時間とする場合
Q = 20 ÷ 10 = 2.0 m³/h(約33 L/min)
② 全揚程の計算
全揚程(TDH:Total Dynamic Head)は、ポンプが水を送り上げるために必要な圧力の合計です。以下の式で求めます。
H(m)= 実揚程 + 配管摩擦損失 + 吐出圧力(残圧)
実揚程:受水槽水面〜送水先の高さの差(m)
配管摩擦損失:配管内の圧力損失(m水頭に換算)
吐出圧力:送水先で必要な残圧(一般的に5〜10 m)
| 項目 | 数値の例 |
|---|---|
| 実揚程(地下1階受水槽→屋上高置水槽 10階建て) | 約35 m |
| 配管摩擦損失(全配管長の10〜20%が目安) | 5〜7 m |
| 吐出残圧 | 5 m |
| 全揚程合計 | 45〜47 m |
配管摩擦損失は、Hazen-Williams式または管摩擦係数式(Darcy-Weisbach式)で詳細計算できますが、概算では実揚程の15〜20%を加算することが多いです。
③ ポンプの選定
算出した流量Qと全揚程Hをもとに、各メーカーのポンプ性能曲線(Q-H曲線)からポンプを選定します。選定のポイントは以下のとおりです。
- 運転点が効率の良い範囲に入っているか確認する(最高効率点の±20%以内が理想)
- 揚水ポンプは通常2台設置(1台運転・1台予備)とするのが標準
- 電動機(モーター)の出力は、軸動力の1.2〜1.3倍のものを選ぶ
P(kW)= ρ × g × Q × H ÷(3600 × η)
ρ:水の密度(1000 kg/m³)
g:重力加速度(9.81 m/s²)
Q:流量(m³/h)
H:全揚程(m)
η:ポンプ効率(0.55〜0.75)
揚水ポンプ選定の計算例
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 受水槽容量 | 20 m³ |
| 補給時間 | 10時間 |
| 必要流量 Q | 2.0 m³/h(33 L/min) |
| 実揚程 | 35 m |
| 配管摩擦損失 | 6 m |
| 吐出残圧 | 5 m |
| 全揚程 H | 46 m |
| ポンプ効率 η | 0.60 |
| 軸動力 | 1000×9.81×2.0×46÷(3600×0.60) ≒ 0.42 kW |
| 電動機出力(1.3倍) | 0.55 kW以上(標準品:0.75 kWを選定) |
選定時の注意点
- キャビテーション防止:ポンプ吸込み側の圧力が低くなりすぎないよう、吸込み揚程は通常6〜7 m以内に収める
- インバータ制御:省エネ・流量制御のため、インバータ付きポンプユニットを採用するケースが増えている
- 設置環境:騒音・振動を考慮して防振台や防音対策が必要な場合がある
- 消防法との関係:スプリンクラーや消火栓の加圧送水装置は揚水ポンプとは別に計算が必要
まとめ
- 揚水ポンプの選定には流量(受水槽容量÷補給時間)と全揚程(実揚程+摩擦損失+残圧)の算出が必須
- ポンプはQ-H曲線の効率良い範囲に運転点が入るように選ぶ
- 通常2台設置(1台運転・1台予備)とし、電動機出力は軸動力の1.2〜1.3倍を選ぶ
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