通気配管をあふれ縁から150ミリ立ち上げなければいけない理由
通気配管をあふれ縁より
150mm立ち上げなければならない理由
「なんとなく決まり事だから」では危険です。
この記事では封水の仕組み・トラブル事例・法令根拠まで図解でわかりやすく解説します。
📐 通気管端部 ≥ あふれ縁 + 150mm
📋 目次
1 そもそも「通気配管」「あふれ縁」とは?
機械設備工事に携わると、必ず登場するのが通気配管(通気管)とあふれ縁(オーバーフローエッジ)という用語です。まずはそれぞれの意味を確認しましょう。
💧 通気管(つうきかん)とは
排水管内部の気圧を大気圧に保つための配管です。排水が勢いよく流れると管内が負圧になり、トラップ(封水)が吸い込まれてしまいます。通気管はこの圧力変動を防ぎ、トラップの封水を正常に保つ重要な役割を担っています。
📏 あふれ縁(あふれえん)とは
洗面台・流し台・浴槽・便器などの衛生器具において、水がそれ以上たまると外にあふれ出す最高水位の縁のことです。洗面台であれば排水口の周縁部(洗面ボウルの上端部)がこれにあたります。
この2つの関係が、通気管の施工高さを決める根拠になっています。
2 正しい施工とは — 図解で確認
正しい施工では、通気管の開口端(端部)をあふれ縁より150mm以上高い位置に設けます。
📗 図1:正しい施工 — 通気管をあふれ縁より150mm以上立ち上げた状態

✓ 正しい施工のポイント
- 通気管端部の高さ ≥ あふれ縁の高さ + 150mm
- 通気管は壁内または露出で立ち上げ、大気に開放する
- 水平区間は排水の流れ方向に向かって適切な勾配をつける
3 150mmを守らないとどうなるか?NG例とトラブル
「少し低くても大丈夫では?」と思う方もいるかもしれません。しかし、立ち上げ不足は深刻なトラブルに直結します。実際のNGパターンと、そこで起きる事象を確認しましょう。
🚫 図2:NG例 — 通気管の立ち上げが不足している状態

⚠️ 図3:トラブル発生 — 汚水が通気管に逆流するメカニズム

上の図のように、通気管の端部があふれ縁より低い位置にある場合、以下の順序でトラブルが発生します。
STEP 1
排水詰まりや大量排水により器具が満水になる
排水管の詰まりや同時多量排水で器具(洗面台・浴槽など)に水が溜まっていきます。
STEP 2
水位があふれ縁を超え、通気管の開口部に達する
通気管端部があふれ縁より低いため、満水になった汚水が通気管の口に流れ込みます。
STEP 3
汚水が通気管内に侵入し、配管内が汚染される
通気管に汚水が入り込み、管内が汚染。封水切れで悪臭・害虫の侵入も発生します。
🚨 立ち上げ不足が引き起こす問題
- 汚水が通気管内に逆流し、配管全体が汚染される
- 封水(トラップ内の水)が失われ、下水の臭気が室内に充満する
- 害虫(ゴキブリ・ハエ)が排水管から室内へ侵入する
- 建築基準法・設備規準違反となり、検査不合格・手直し工事が必要になる
4 なぜ「150mm」という数値なのか?仕組みと法令根拠
「150mm以上」は現場の経験則ではなく、設備規準・法令で定められた数値です。
📘 図4:仕組みと根拠 — トラップ封水の原理と150mm規定の意味

トラップ封水が果たす役割
衛生器具には必ずトラップ(封水装置)が設けられています。トラップ内に水(封水)を貯め、下水側からの臭気・害虫の侵入を遮断します。
しかし排水が流れると管内が負圧になり、封水が引っ張られて流れてしまうことがあります(自己サイホン・誘導サイホン現象)。通気管はこの負圧を解消し、封水を正常に保つために設けられています。
「150mm」の根拠
📋 関連法令・規準
SHASE-S206 給排水衛生設備規準・同解説(空気調和・衛生工学会)
通気管の末端(大気開放部)は「最高位の衛生器具のあふれ縁より150mm以上高く立ち上げること」と明記 建築基準法 施行令および関連告示において衛生設備の技術基準を規定。
各自治体の条例でも同様の規定が設けられている場合があります。 公共建築工事標準仕様書 国土交通省が定める標準仕様書でも通気管の立ち上げ高さを規定。
設計・施工の基本公式
通気管端部の高さ ≥ あふれ縁の高さ + 150mm
この数値は「器具が最悪状態(満水)になっても汚水が通気管に入らない」最低限のクリアランス。
施工誤差を考慮しても安全を確保できる数値として規定されています。
| 比較項目 | ✓ 正しい施工(150mm以上) | ✗ NG施工(150mm未満) |
|---|---|---|
| 汚水逆流リスク | なし(器具満水時も安全) | あり(満水時に汚水が流入) |
| 封水の保持 | 正常(臭気を遮断) | 封水切れ→臭気・害虫侵入 |
| 法令適合 | SHASE-S206・建築基準法適合 | 違反→検査不合格・手直し |
| 衛生環境 | 室内の清潔・安全を確保 | 汚染・悪臭・害虫被害 |
5 現場チェックリスト
施工前・施工中・完了検査前に以下の項目を確認しましょう。
- 各衛生器具のあふれ縁の高さ(FL+〇〇mm)を図面で確認した
- 通気管端部の高さが「あふれ縁+150mm以上」になるよう墨出し・取付を行った
- 壁内通気管は仕上がり後も高さが変わらないことを確認した
- 複数の器具が同一通気系統に接続される場合、最も高いあふれ縁を基準に150mmを確保した
- 通気管の末端は大気に開放され、閉塞・異物詰まりがないことを確認した
- 試験(通水試験・気密試験)前に高さの実測値を記録した
⚠️ よくある現場ミス
- 「だいたいこのくらい」と目視で判断し、実際は100mm程度しかなかった
- 器具の取付高さが変更になったのに通気管の位置を修正し忘れた
- 仕上げ材(タイル・パネル)施工後に通気管端部が隠れてしまった
- 複数器具のうち最も高い器具を基準にしなかった
📌 まとめ — この記事のポイント
- 通気管はトラップ封水を守り、臭気・害虫の侵入を防ぐために不可欠な配管
- 端部はあふれ縁より150mm以上高く立ち上げることが法令・規準で定められている
- 不足すると汚水逆流・臭気発生・法令違反という深刻なトラブルが起きる
- 現場では複数器具のうち最も高いあふれ縁を基準に寸法を確保する
- 「150mm以上」は安全マージンと施工誤差を考慮した合理的な数値
本記事は設備施工の基礎知識を新人技術者向けに解説したものです。
適用基準・法令は改訂される場合があります。最新版をご確認ください。
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