この記事は設備スリーブ入れの基本手順と構造制限を解説します。若手設備技術者が現場に入る前に知っておくべき知識を、図表つきでわかりやすくまとめています。

スリーブ入れとは?

スリーブ入れとは、コンクリートを打設する前に、梁や壁などの躯体(構造体)に配管を通すための穴(スリーブ)をあらかじめ設ける作業のことです。

給排水管や衛生配管は床下や壁内を通りますが、梁などの構造体と干渉することがあります。コンクリート打設後に穴を開けると構造体を傷めるため、打設前にスリーブ(鋼管や塩ビ管)を仕込んでおくのが基本です。

💡 若手へのポイント:スリーブ入れは設備工事で最初に行う重要な工程です。ここでミスをすると後の配管工程に大きく影響するため、建築・鉄筋業者との連携が非常に大切です。
スリーブ入れ 断面図(正面・側面イメージ) 【梁断面 正面図】 D (梁せい) H(孔径)≤ D÷3 L3 へりあき コンクリート梁 (青円=スリーブ) 【3D(孔間距離)ルール】 φ100 φ100 L2 ≥ 300mm (孔間距離 = 3D) 計算式 (100+100) ÷ 2 × 3 = 300 → 中心間距離を300mm以上確保 コンクリート梁 スリーブ(φ100)
▲ 梁断面図(左)と3D孔間距離ルール(右)のイメージ図

作業の全体の流れ

1

躯体図の入手・ルート検討

建築業者から躯体図をもらい、梁の位置・梁成(高さ D)・梁幅を確認して配管ルートを決める。

2

スリーブサイズ・位置の決定

孔径・へりあき・孔間隔(3D)などの構造制限を守りながら各スリーブの位置とサイズを決める。

3

構造計算の依頼

スリーブ位置・サイズを建築業者または補強材業者に送り、計算書でOK確認をもらう。

4

墨だし(マーキング)

捨てコンにスリーブ位置をラッカースプレーなどでマーキング。鉄筋業者が梁を組む前に行う。

5

スリーブ挿入・固定

鉄筋組み立て完了後、墨だし位置にスリーブを挿入し番線などで固定。補強筋も取り付ける。

6

コンクリート打設後の確認

打設後にスリーブの位置・ズレを確認。記録写真を撮り、次の工程へ引き継ぐ。

① ルート検討のポイント

躯体図(構造図)をもとに配管ルートを検討します。躯体図には梁の位置・梁成(梁の高さ D)・梁幅が記載されています。スリーブを入れる際に守るべき3つのルールがあります。

孔径の制限(スリーブの最大サイズ)

孔径 H ≤ 梁せい D ÷ 3

スリーブの外径は梁せい(梁の高さ)の1/3以下に抑える必要があります。

📐 計算例

梁せい D = 1,000mm の場合:最大孔径 H = 1,000 ÷ 3 ≒ 333mm → 実務では300mm程度を上限とします。

梁せい D = 700mm の場合:最大孔径 H = 700 ÷ 3 ≒ 233mm → 実務では200mm程度を上限とします。

へりあき寸法の制限

スリーブの中心から梁の上端・下端までの距離(へりあき L3)にも最小値が定められています。梁せいに応じて以下の表を参照してください。

梁せい(D)最小へりあき寸法(L3)備考
500mm ≦ D < 700mm175mm以上上端・下端それぞれ
700mm ≦ D < 900mm200mm以上上端・下端それぞれ
900mm ≦ D < 1250mm250mm以上上端・下端それぞれ
1250mm ≦ D0.2D mm以上例:D=1500mm → 300mm以上
⚠️ 注意:へりあき不足は鉄筋のかぶり厚確保にも影響します。スリーブはなるべく梁断面の中央付近に配置するのが基本です。

孔間隔の制限(3Dルール)

同じ梁に複数のスリーブを入れる場合、スリーブ同士の中心間距離(L2)は「孔径の平均の3倍以上」離す必要があります。これを現場では「3D」と呼びます。

孔間距離 L2 ≥ (H1 + H2) ÷ 2 × 3

📐 計算例

φ100 と φ100 のスリーブを並べる場合:
L2 ≥ (100 + 100) ÷ 2 × 3 = 300mm以上

φ150 と φ100 のスリーブを並べる場合:
L2 ≥ (150 + 100) ÷ 2 × 3 = 375mm以上

💡 現場メモ:3Dルールを確認するクセをつけると、後から「スリーブ近すぎてNGになった」という修正が減ります。ルート検討段階で余裕を持った間隔を確保しましょう。

② 構造計算の依頼

ルートと位置が決まったら、スリーブが構造的に問題ないか計算書を作成してもらいます。計算を依頼するルートは主に2つです。

ルート依頼先特徴
パターンA元請け建築業者 → 補強材業者大規模現場で多い。建築側がまとめて管理
パターンB設備業者 → 補強材業者(直接)小規模・スピード重視の現場で多い

計算書でNGが出た場合は位置を修正します。梁成・孔径・へりあきのルールを守っていれば、修正は数センチ程度で収まることがほとんどです。

💡 ポイント:計算依頼の際は「スリーブ位置図」として孔径・柱際からの距離・梁端からの距離を明記した図面を渡すとスムーズです。

③ 墨だし(マーキング)

墨だしとは、捨てコン(下地コンクリート)にスリーブの取付け位置を印付けする作業です。鉄筋業者が梁を組む際にスターラップ(梁の巻き筋)の位置を調整してもらうために欠かせません。

項目内容
使用材料ラッカースプレー、チョーク、墨つぼなど
マーキング位置スリーブ外径 + 50mm 程度のかぶりを見た位置
実施タイミング鉄筋組み立てに必ず行う
目的鉄筋業者へのスリーブ位置の周知・スターラップのかわし
⚠️ 墨だし忘れに注意:墨だしをしないと鉄筋業者がスターラップをスリーブ位置に組んでしまい、後からスリーブが入れられなくなります。鉄筋組み立て前に必ず行いましょう。スターラップとは梁鉄筋に巻かれたせん断補強筋のことです。

④ スリーブの挿入と固定

鉄筋組み立てが完了したら、墨だし位置にスリーブを挿入します。鉄筋業者がスターラップをかわしてくれているため、スリーブは比較的入れやすい状態になっています。

作業項目内容・ポイント
スリーブ固定番線(結束線)で鉄筋に固定。コンクリート打設時に動かないよう確実に
補強筋の取付け計算書の指示に従い開口補強筋を配置する
打設前確認スリーブの向き・高さ・位置が図面通りか再確認
型枠との取合い型枠業者と打合せし、型枠貫通部の処理を確認
💡 打設中の注意:コンクリートバイブレーターの振動でスリーブがズレることがあります。打設中は位置を監視し、打設後は必ず確認と記録写真を撮っておきましょう。

地中梁の「構造体」と「増し打ち」の違い

スリーブ入れの現場でよく混乱するのが、地中梁(基礎梁)における「構造体部分」と「増し打ち部分」の区別です。この2つを混同すると、スリーブ位置の判断ミスや、長さ不足による施工不良につながります。

地中梁 横断面図|構造体と増し打ちの位置関係 【横断面図(梁の切断面)】 地 盤 増し打ち(下端) 構 造 体 (耐力部・スリーブ制限の基準) スリーブ (断面は円) 増し打ち(上端・天端) D 構造体高さ (制限の基準) 増し打ち厚 増し打ち厚 【各部の役割と注意点】 ■ 構造体(梁せい D) ・スリーブ孔径 ≤ D ÷ 3 ・へりあきはDの上下端から計算 ・すべての構造制限が適用される ■ 増し打ち部(上下端) ・構造耐力は負担しない ・スリーブ孔径制限の対象外 ・スリーブ長さの計算に加算必要 ⚠️ よくあるミス 増し打ちを含めた全高さをDとして 計算すると制限が緩くなりNG! → 必ず構造体のみの梁成で確認 構造体 増し打ち(上下) スリーブ(断面円形)
▲ 地中梁の横断面図。増し打ちは構造体の上下に配置されます。へりあき・孔径制限は構造体高さDが基準です。

構造体部分とは

構造体とは、設計図書(構造図)に示された鉄筋コンクリートの耐力部分のことです。梁の荷重を支える本体であり、スリーブを貫通させる際に孔径・へりあき・3Dルールなどの制限が厳格に適用されます。

項目内容
役割梁の曲げ・せん断力を負担する耐力部
図面上の表記躯体図・構造図に梁成(D)として記載される
スリーブの扱い孔径D/3・へりあき・3Dルールが全て適用される
計算の基準へりあきL3の計算は構造体の上下端から行う

増し打ち部分とは

増し打ちとは、構造体の外側に防水・防食・仕上げ目的で打ち増しされたコンクリートのことです。構造耐力は担わないため、スリーブの構造制限(孔径・へりあきなど)の計算には含みません。

項目内容
役割防水・防食・外装仕上げ・寸法調整
図面上の表記仕上げ図や特記仕様書に記載(構造図とは別)
スリーブの扱い構造制限の対象外。ただしスリーブ長さに加算が必要
注意点増し打ち厚が大きい場合、スリーブが短いと貫通不足になる

現場でよくあるミスと対策

⚠️ ミス①:増し打ちを含めた高さをDとして計算してしまう
へりあきや孔径制限はあくまで構造体の高さDが基準です。増し打ち厚を含めてDとみなすと制限が緩くなり、構造NGになる危険があります。躯体図で構造体のみの梁成を必ず確認しましょう。
⚠️ ミス②:スリーブの長さが構造体分しかない
スリーブは構造体+増し打ち両側分の長さが必要です。増し打ち厚を考慮しないとスリーブが型枠から出ず、配管が通らなくなります。スリーブ長 = 梁幅(構造体)+ 増し打ち厚×2 で準備しましょう。
💡 図面の読み方:躯体図(構造図)に記載された梁成がD(構造体高さ)です。増し打ちは仕上げ図や断面詳細図に別途記載されることが多いため、必ず2種類の図面を照合する習慣をつけましょう。

📐 スリーブ長さの計算例

梁幅(構造体)= 400mm、増し打ち厚 = 左50mm・右50mm の場合:
スリーブ必要長さ = 400 + 50 + 50 = 500mm

※ 実際は施工誤差・型枠厚を考慮してさらに10〜20mm余裕を見ること

まとめチェックリスト

チェック項目ルール・目安
孔径の上限梁せい(D)の 1/3 以下
へりあき(上・下端から)梁せいに応じて 175〜250mm 以上(または 0.2D)
孔間距離(3D)隣のスリーブとの中心間距離 ≥ 平均孔径 × 3
構造計算スリーブ位置決定後に必ず計算書でOK確認
墨だし鉄筋組み立て前に捨コンへマーキング(50mm かぶり)
スリーブ固定番線で鉄筋にしっかり固定・補強筋を忘れずに
打設後確認位置ズレの確認・記録写真の撮影

スリーブ入れは設備工事で最初に行う工程であり、ミスが後工程に大きく影響します。構造ルールをしっかり頭に入れて、建築・鉄筋業者と連携しながら進めましょう。わからないことは先輩や建築側の担当者に遠慮なく確認することが大切です。

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繊細な設備屋けー君
設備施工管理として10年働いております。 図面作成他何かお手伝いできる事がございましたらご連絡お願いいたします 資格・・1級管工事施工管理技士、甲種Ⅰ類消防設備士、電気工事士です どうかぜひとも読んでいって下されば幸いです