設備スリーブ入れの手順の説明
スリーブ入れとは?
スリーブ入れとは、コンクリートを打設する前に、梁や壁などの躯体(構造体)に配管を通すための穴(スリーブ)をあらかじめ設ける作業のことです。
給排水管や衛生配管は床下や壁内を通りますが、梁などの構造体と干渉することがあります。コンクリート打設後に穴を開けると構造体を傷めるため、打設前にスリーブ(鋼管や塩ビ管)を仕込んでおくのが基本です。
作業の全体の流れ
躯体図の入手・ルート検討
建築業者から躯体図をもらい、梁の位置・梁成(高さ D)・梁幅を確認して配管ルートを決める。
スリーブサイズ・位置の決定
孔径・へりあき・孔間隔(3D)などの構造制限を守りながら各スリーブの位置とサイズを決める。
構造計算の依頼
スリーブ位置・サイズを建築業者または補強材業者に送り、計算書でOK確認をもらう。
墨だし(マーキング)
捨てコンにスリーブ位置をラッカースプレーなどでマーキング。鉄筋業者が梁を組む前に行う。
スリーブ挿入・固定
鉄筋組み立て完了後、墨だし位置にスリーブを挿入し番線などで固定。補強筋も取り付ける。
コンクリート打設後の確認
打設後にスリーブの位置・ズレを確認。記録写真を撮り、次の工程へ引き継ぐ。
① ルート検討のポイント
躯体図(構造図)をもとに配管ルートを検討します。躯体図には梁の位置・梁成(梁の高さ D)・梁幅が記載されています。スリーブを入れる際に守るべき3つのルールがあります。
孔径の制限(スリーブの最大サイズ)
スリーブの外径は梁せい(梁の高さ)の1/3以下に抑える必要があります。
📐 計算例
梁せい D = 1,000mm の場合:最大孔径 H = 1,000 ÷ 3 ≒ 333mm → 実務では300mm程度を上限とします。
梁せい D = 700mm の場合:最大孔径 H = 700 ÷ 3 ≒ 233mm → 実務では200mm程度を上限とします。
へりあき寸法の制限
スリーブの中心から梁の上端・下端までの距離(へりあき L3)にも最小値が定められています。梁せいに応じて以下の表を参照してください。
| 梁せい(D) | 最小へりあき寸法(L3) | 備考 |
|---|---|---|
| 500mm ≦ D < 700mm | 175mm以上 | 上端・下端それぞれ |
| 700mm ≦ D < 900mm | 200mm以上 | 上端・下端それぞれ |
| 900mm ≦ D < 1250mm | 250mm以上 | 上端・下端それぞれ |
| 1250mm ≦ D | 0.2D mm以上 | 例:D=1500mm → 300mm以上 |
孔間隔の制限(3Dルール)
同じ梁に複数のスリーブを入れる場合、スリーブ同士の中心間距離(L2)は「孔径の平均の3倍以上」離す必要があります。これを現場では「3D」と呼びます。
📐 計算例
φ100 と φ100 のスリーブを並べる場合:
L2 ≥ (100 + 100) ÷ 2 × 3 = 300mm以上
φ150 と φ100 のスリーブを並べる場合:
L2 ≥ (150 + 100) ÷ 2 × 3 = 375mm以上
② 構造計算の依頼
ルートと位置が決まったら、スリーブが構造的に問題ないか計算書を作成してもらいます。計算を依頼するルートは主に2つです。
| ルート | 依頼先 | 特徴 |
|---|---|---|
| パターンA | 元請け建築業者 → 補強材業者 | 大規模現場で多い。建築側がまとめて管理 |
| パターンB | 設備業者 → 補強材業者(直接) | 小規模・スピード重視の現場で多い |
計算書でNGが出た場合は位置を修正します。梁成・孔径・へりあきのルールを守っていれば、修正は数センチ程度で収まることがほとんどです。
③ 墨だし(マーキング)
墨だしとは、捨てコン(下地コンクリート)にスリーブの取付け位置を印付けする作業です。鉄筋業者が梁を組む際にスターラップ(梁の巻き筋)の位置を調整してもらうために欠かせません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使用材料 | ラッカースプレー、チョーク、墨つぼなど |
| マーキング位置 | スリーブ外径 + 50mm 程度のかぶりを見た位置 |
| 実施タイミング | 鉄筋組み立て前に必ず行う |
| 目的 | 鉄筋業者へのスリーブ位置の周知・スターラップのかわし |
④ スリーブの挿入と固定
鉄筋組み立てが完了したら、墨だし位置にスリーブを挿入します。鉄筋業者がスターラップをかわしてくれているため、スリーブは比較的入れやすい状態になっています。
| 作業項目 | 内容・ポイント |
|---|---|
| スリーブ固定 | 番線(結束線)で鉄筋に固定。コンクリート打設時に動かないよう確実に |
| 補強筋の取付け | 計算書の指示に従い開口補強筋を配置する |
| 打設前確認 | スリーブの向き・高さ・位置が図面通りか再確認 |
| 型枠との取合い | 型枠業者と打合せし、型枠貫通部の処理を確認 |
地中梁の「構造体」と「増し打ち」の違い
スリーブ入れの現場でよく混乱するのが、地中梁(基礎梁)における「構造体部分」と「増し打ち部分」の区別です。この2つを混同すると、スリーブ位置の判断ミスや、長さ不足による施工不良につながります。
構造体部分とは
構造体とは、設計図書(構造図)に示された鉄筋コンクリートの耐力部分のことです。梁の荷重を支える本体であり、スリーブを貫通させる際に孔径・へりあき・3Dルールなどの制限が厳格に適用されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | 梁の曲げ・せん断力を負担する耐力部 |
| 図面上の表記 | 躯体図・構造図に梁成(D)として記載される |
| スリーブの扱い | 孔径D/3・へりあき・3Dルールが全て適用される |
| 計算の基準 | へりあきL3の計算は構造体の上下端から行う |
増し打ち部分とは
増し打ちとは、構造体の外側に防水・防食・仕上げ目的で打ち増しされたコンクリートのことです。構造耐力は担わないため、スリーブの構造制限(孔径・へりあきなど)の計算には含みません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | 防水・防食・外装仕上げ・寸法調整 |
| 図面上の表記 | 仕上げ図や特記仕様書に記載(構造図とは別) |
| スリーブの扱い | 構造制限の対象外。ただしスリーブ長さに加算が必要 |
| 注意点 | 増し打ち厚が大きい場合、スリーブが短いと貫通不足になる |
現場でよくあるミスと対策
へりあきや孔径制限はあくまで構造体の高さDが基準です。増し打ち厚を含めてDとみなすと制限が緩くなり、構造NGになる危険があります。躯体図で構造体のみの梁成を必ず確認しましょう。
スリーブは構造体+増し打ち両側分の長さが必要です。増し打ち厚を考慮しないとスリーブが型枠から出ず、配管が通らなくなります。スリーブ長 = 梁幅(構造体)+ 増し打ち厚×2 で準備しましょう。
📐 スリーブ長さの計算例
梁幅(構造体)= 400mm、増し打ち厚 = 左50mm・右50mm の場合:
スリーブ必要長さ = 400 + 50 + 50 = 500mm
※ 実際は施工誤差・型枠厚を考慮してさらに10〜20mm余裕を見ること
まとめチェックリスト
| チェック項目 | ルール・目安 |
|---|---|
| 孔径の上限 | 梁せい(D)の 1/3 以下 |
| へりあき(上・下端から) | 梁せいに応じて 175〜250mm 以上(または 0.2D) |
| 孔間距離(3D) | 隣のスリーブとの中心間距離 ≥ 平均孔径 × 3 |
| 構造計算 | スリーブ位置決定後に必ず計算書でOK確認 |
| 墨だし | 鉄筋組み立て前に捨コンへマーキング(50mm かぶり) |
| スリーブ固定 | 番線で鉄筋にしっかり固定・補強筋を忘れずに |
| 打設後確認 | 位置ズレの確認・記録写真の撮影 |
スリーブ入れは設備工事で最初に行う工程であり、ミスが後工程に大きく影響します。構造ルールをしっかり頭に入れて、建築・鉄筋業者と連携しながら進めましょう。わからないことは先輩や建築側の担当者に遠慮なく確認することが大切です。
数量を入力するだけで工事費が自動計算されます。
公共工事標準歩掛に基づいた実務向け設計。
⚡ 設備設計Excelテンプレート 9点セット
配管摩擦損失・給湯設備・換気量・ダクトサイズなど現場で使える計算書を全部まとめて
¥3,980(単品合計 ¥9,840 → 約60%OFF)
noteで購入する →