機外静圧とは?初心者向けにわかりやすく解説|計算方法・単位・実務の注意点
機外静圧(きがいせいあつ)は、空調・換気設備の設計で必ず登場する言葉ですが、「なんとなく知っているけど説明できない」という若手技術者も多い概念です。本記事では機外静圧とは何か、どうやって計算するか、実務での使い方を初心者向けにわかりやすく解説します。
機外静圧とは?
機外静圧とは、ファン(送風機)がダクト系統に対して送り出せる圧力のことです。
ファンは空気を押し出す力(圧力)を持っています。この圧力が、ダクト内の空気の抵抗(圧力損失)に打ち勝つことで、空気が目的の場所まで届きます。
機外静圧 = ファンがダクトを押し通せる力
圧力損失 = ダクト系統の空気の抵抗
機外静圧 ≧ 圧力損失 になっていれば、設計した風量が各室に届く
「機内」と「機外」の違い
ファンの仕様書には「全静圧」と「機外静圧」の2つが記載されていることがあります。この違いを整理しておきましょう。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 全静圧 | ファン単体が発生できる静圧の総量 |
| 機内圧力損失 | ファン本体・フィルター・コイル・チャンバー等、機器内部の圧力損失 |
| 機外静圧 | 全静圧 - 機内圧力損失 = ダクト系統に使える圧力 |
ダクト設計で使う圧力はこの「機外静圧」です
カタログの「全静圧」をそのままダクトの圧力損失と比較してしまうと、実際には風量が出ない設計になることがあります。必ず「機外静圧」と比較してください。
圧力損失とは?
機外静圧と比較する「圧力損失」とは、ダクト内を空気が流れる際に生じる摩擦・曲がり・絞りによるエネルギーの損失です。
| 圧力損失の種類 | 原因 |
|---|---|
| 直管部の摩擦損失 | ダクト内壁との摩擦。長いほど、流速が速いほど大きい |
| 局部抵抗(曲がり・分岐) | エルボ・チーズ・ダンパー等による乱流 |
| 制気口・グリルの抵抗 | 吹出口・吸込口の通過抵抗 |
ダクト設計では、給気側・排気側それぞれの最も圧力損失が大きい経路(最遠端系統)の合計圧力損失を計算し、これが機外静圧以下になるようにダクトサイズを決めます。
機外静圧の計算例
実際の設計での流れを見てみましょう。
条件
- 天井カセット型エアコン(PAC)の機外静圧:30 Pa
- ダクト系統の圧力損失(最遠端):25 Pa
機外静圧が圧力損失を上回っているので、設計した風量が届く
逆に、圧力損失が機外静圧を超えてしまう場合は、以下の対策が必要です。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| ダクトサイズを大きくする | 断面積を増やして流速を下げ、摩擦損失を減らす |
| ダクト経路を短くする | 最遠端を短縮してルートを見直す |
| 曲がり・分岐の数を減らす | 局部抵抗を減らす |
| 機外静圧の高い機種に変更する | メーカーの別機種・別シリーズを検討 |
機外静圧の単位
機外静圧の単位は Pa(パスカル) です。古い資料では mmAq(ミリメートル水柱) が使われていることもあります。
1 Pa ≒ 0.102 mmAq
カタログによってPaとmmAqが混在しているため、比較する際は単位を統一しましょう。
用途別の機外静圧の目安
機器の種類によって、一般的な機外静圧の大きさが異なります。
| 機器の種類 | 機外静圧の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 天井カセット型エアコン(PAC) | 0〜30 Pa(機種による) | ダクトを長く伸ばすのには不向き |
| 天井埋込ダクト型エアコン | 30〜150 Pa | ダクト接続前提の機種。中規模向け |
| エアハンドリングユニット(AHU) | 100〜300 Pa以上 | 大規模施設向け。高静圧タイプあり |
| 全熱交換器(天井埋込型) | 50〜150 Pa | 給排気ダクトそれぞれで確認が必要 |
| 送風機(ファンコイルユニット等) | 機種により大幅に異なる | Q-P曲線(性能曲線)で確認する |
Q-P曲線(性能曲線)の見方
ファン・送風機のカタログには Q-P曲線(風量-静圧曲線) が記載されています。この曲線の見方を理解することが、機外静圧を正しく使うための重要なポイントです。
- 横軸:風量(m³/h または m³/min)
- 縦軸:静圧(Pa または mmAq)
- 曲線上の点が「その風量のときに発揮できる静圧」を示す
設計風量(例:1,000 m³/h)での縦軸の値が「機外静圧」です。
この値がダクト系統の圧力損失を上回っていれば、設計通りの風量が流れます。
逆に、圧力損失が大きすぎると運転点が左にずれ、風量が落ちてしまいます。
実務でよく起きる失敗パターン
❌ 失敗① 機外静圧を確認せずに天カセにダクトを接続する
天井カセット型エアコンの中には、機外静圧が0Paの機種があります。こういった機種にダクトを接続すると、ダクトの抵抗に勝てず風量が激減します。必ず仕様書で「機外静圧:○○Pa」を確認してください。
❌ 失敗② 最遠端だけでなくすべての系統を確認しない
圧力損失の計算は「最も遠い系統」だけでなく、分岐した各ルートでバランスが取れているかも確認が必要です。近い吹出口に風が集中し、遠い吹出口から風が出ないというトラブルが起きます。
❌ 失敗③ フィルター目詰まりを考慮しない
フィルターが目詰まりすると機内圧力損失が増大し、機外静圧が減少します。フィルターは定期清掃・交換を前提として、目詰まり時の圧力損失も考慮した設計が必要です。
まとめ
- 機外静圧 = 全静圧 ー 機内圧力損失。ダクト系統に使える圧力のこと
- 機外静圧 ≧ ダクト系統の圧力損失 となるように設計する
- 単位は Pa(パスカル)。古い資料のmmAqとは 1 mmAq ≒ 10 Pa で換算
- 天井カセット型エアコンはダクト接続に向かない機種がある(機外静圧0Pa)
- Q-P曲線(性能曲線)で設計風量時の機外静圧を確認する
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